太めの体型だと「着物は似合わない」「そもそもサイズがない」と思い込んでしまうことがありますが、実はそんなことはありません。
着物は寸法の取り方が独特で、洋服とは違った視点でサイズを見ていくことで、ふくよかな体型でもきれいに着こなせる方法が見つかります。
この記事では、3L〜5L相当のサイズ選びの目安や採寸のポイント、仕立てやレンタルの工夫まで、体型を気にせず着物を楽しむために知っておきたい情報を詳しく紹介していきます。
太っている人の着物サイズの目安は?3L・4L・5Lに対応できる寸法と着られる条件を解説
着物のサイズは、見た目や体感に大きく影響します。特に体型がふくよかな人にとっては、ただ「大きめ」を選ぶだけでは足りません。ポイントになるのは、自分の体に対してどの寸法を基準に選べばいいかを知ることです。洋服とは異なる着物のサイズ感と、3L〜5Lなどの目安について見ていきましょう。
着物は身幅で決まる!ヒップサイズが重要な理由
着物のサイズを決めるうえで一番大事なのは「ヒップの大きさ」です。洋服ではバストやウエストを重視することが多いですが、着物の場合は腰回りを包む身幅が足りているかが最優先になります。
着物は一枚の反物を体に巻き付けて着る構造のため、ヒップが大きいと前が合わず、はだけやすくなったり裾合わせが崩れやすくなったりします。反対にヒップさえ合っていれば、多少バストや腕が大きくても着付けで調整が可能です。
そのため、自分のヒップ寸法を把握しておくことが、サイズ選びのスタートになります。
ヒップ100cm超なら3L〜5L?目安寸法を具体的にチェック
ヒップの寸法をもとに、一般的なサイズ感の目安を以下にまとめました。
ヒップサイズの目安 | 対応サイズ(参考) | 対応する着物の身幅 |
---|---|---|
〜95cm | M〜L | 前幅24cm+後幅30cm |
96〜105cm | 2L〜3L | 前幅26cm+後幅32cm |
106〜115cm | 4L | 前幅28cm+後幅34cm |
116cm〜 | 5L以上 | 前幅30cm+後幅36cm〜 |
ふくよかな体型でも対応できる既製品サイズと対応範囲
近年では、3L〜5Lサイズに対応した既製品の着物も増えてきました。特に「ゆったりサイズ」や「ふくよかサイズ」といった表記で販売されているものは、ヒップだけでなく腕周りやバスト、身丈も調整されていることが多いです。
ただし、同じ「3L」でもブランドやショップによって寸法は異なります。商品ページに掲載されている身丈・裄・前幅・後幅をよく確認し、自分の寸法に合うかを見極めることが大切です。
また、着物専門店やネットショップの中には、ふくよか体型専用の型紙を使った商品もあるため、一般的なサイズよりもフィット感が高く、快適に着られる場合もあります。
自分の体型に合う着物を選ぶための採寸ポイント
正確にサイズを選ぶためには、自分の体の寸法を知っておく必要があります。着物選びでとくに重要なのは、以下の4か所です。
- ヒップ:腰の一番ふくらんだ部分。サイズ決定の基準。
- 裄(ゆき):首の後ろ中心から肩を通って手首まで。
- 身丈:首の後ろからくるぶしの高さまで。
- 前幅・後幅:実物があれば平置きで計測。なければヒップから逆算。
これらを把握したうえで、商品に書かれた寸法と照らし合わせれば、「入るかどうか」ではなく「きれいに着られるか」を基準に選べるようになります。
「太ってる=着物が着られない」は本当?よくある誤解を整理
「着物は細い人のもの」「ふくよかだと似合わない」と思われがちですが、それは完全な誤解です。実際には、着物は直線の布を体に合わせて着るもので、洋服よりも自由度が高いとも言えます。
むしろ、体のラインが出にくい着物は、ふくよかな体型を包み込むようにきれいに見せてくれることもあります。衿の抜き方や帯の位置などでバランスを取れば、メリハリのある上品な着姿が十分に作れます。
「着られるか不安」と感じるより、「どう着ればきれいに見えるか」を考えるほうが、着物を楽しむ近道です。
着付けや補整で工夫すればもっときれいに着られる
体型に合う寸法の着物を選んだうえで、着付けや補整を工夫するとさらにきれいなシルエットになります。たとえば、バストが大きめの人は胸元をすっきり見せるように補整を入れたり、帯の下にタオルを入れて段差を調整したりといった方法があります。
また、帯の位置を少し高めに取ることで、ウエストまわりを引き締めて見せる効果も。衿の角度や衣紋の抜き具合でも印象は変わるため、自分の体型に合った「見せ方」を意識するとより魅力的な着姿になります。
体型に合う着物サイズの目安と選び方をわかりやすく解説
着物は、ヒップだけでなく裄や身丈など複数の寸法が関係します。既製品やネット購入で失敗しないためにも、自分の体に合ったサイズ感を正しく知っておくことが大切です。ここでは、基本の測り方とともに、各サイズに対応する寸法の目安を紹介します。
自分に合う「裄」「身丈」「身幅」の測り方とサイズ早見表
着物選びに必要な3つの寸法と、その測り方は以下のとおりです。
- 裄(ゆき):首の後ろの中心(背縫いの位置)から、肩を通って手首のくるぶしまで。
- 身丈:首の後ろの付け根から、くるぶしまでの直線距離。
- 身幅(前幅+後幅):ヒップの一番大きい部分のサイズに20cm程度を足したものが理想。
下記の表に、これらの基準寸法とサイズの目安をまとめています。
サイズ | 裄の目安 | 身丈の目安 | ヒップの目安(身幅換算) |
---|---|---|---|
M | 64cm前後 | 155〜160cm | 〜95cm(前幅24+後幅30) |
L | 66cm前後 | 160〜165cm | 〜100cm(前幅25+後幅31) |
2L | 68cm前後 | 165〜170cm | 〜105cm(前幅26+後幅32) |
3L | 70cm前後 | 170〜175cm | 〜110cm(前幅27+後幅33) |
4L | 72cm前後 | 175〜180cm | 〜115cm(前幅28+後幅34) |
5L | 74cm以上 | 180cm以上 | 〜120cm(前幅30+後幅36) |
太ももや腕が太い人はどこに注意すべき?サイズ選びのコツ
ヒップだけでなく、太ももや腕がしっかりしている場合も、着物のサイズ選びには少し工夫が必要です。特に裄が短いと、袖の位置が上がってしまい、見た目にも窮屈に映りがちです。また、腕まわりのゆとりが足りないと、動きにくく感じることがあります。
このような体型の場合は、肩幅に加えて袖幅がしっかりとあるかどうかを確認するのがポイントです。裄丈はやや長めを選ぶと安心感があり、全体のバランスも整いやすくなります。袖付けのゆとりが少ない着物は、腕を動かしたときにつっぱることがあるため、袖の構造にも注目して選ぶと失敗が少なくなります。
特にネット購入では、商品の写真だけでは袖のゆとり感が伝わりにくいため、「袖幅」や「袖付け」に関する記載があるショップを選ぶと安心です。見た目と着心地の両方を整えるには、細かい寸法情報を丁寧に確認することが大切です。
ネットで買うときに見落としやすいサイズ表記のチェック項目
ネットショップで着物を買うときは、サイズの表記に注意が必要です。とくに以下の点は見落とされがちなので、必ず確認しましょう。
- 「裄」と「袖丈」を混同しない:似ているが意味が違うため、注意。
- 「身丈」が「肩から」か「背から」か:測り方によって5cm以上差が出ることも。
- 「前幅」「後幅」の表記がない場合:ヒップに対して身幅が足りない可能性もある。
特に「フリーサイズ」や「ゆったり」と書かれた商品は実寸をしっかり確認しないと失敗しやすいです。「ヒップが何cmまで対応」と具体的に記載されているショップを選ぶと安心です。
サイズが合わないときはどうする?仕立てや超ワイドサイズ対応の工夫を紹介
「気に入った着物があってもサイズが合わない」「ヒップや腕が入らない」と感じるときも、あきらめる必要はありません。着物は構造的にサイズ調整がしやすく、選択肢も意外と多いものです。ここでは、仕立てや既製品以外の対応方法を紹介します。
反物から仕立てればどんな体型でも着物を作れる
もっとも自由度が高いのが、反物から自分の体型に合わせて仕立てる方法です。反物とは着物用の布で、寸法さえ確保できれば、ヒップが大きくても裄が長くても、その人にぴったり合った着物を一から作れます。
特にふくよかな体型の人にとっては、「自分のサイズに合わせた寸法」で仕立てられる点が最大のメリットです。見た目のバランスも自然に整い、苦しくなく、着姿もきれいに仕上がります。
費用は既製品より高くなりますが、長く着られる1枚として考えるなら、コスト以上の価値があります。
超ワイドサイズにも対応できる既製品ショップの選び方
仕立てまでは考えていない場合でも、最近は3L〜5L以上のサイズに対応した既製品を扱うショップも増えてきています。「ふくよかサイズ」「ゆったりサイズ」と記載された商品や、ヒップ120cm以上対応と明記されているブランドもあります。
ポイントは、実寸サイズを詳細に掲載しているショップを選ぶことです。曖昧な「大きめ」「フリーサイズ」表記ではなく、前幅・後幅・裄・身丈が明記されているショップなら、安心して選べます。
また、体型ごとに型紙を変えているメーカーもあり、着心地や着姿の完成度が違ってくることもあります。
手持ちの着物をサイズ直しすることは可能?
実は、今持っている着物をサイズアップすることもできます。着物には「縫い込み」という余裕が取ってあることが多く、特に裄や身幅なら、数cm程度なら出すことが可能です。
ただし、ヒップに対して十分な布幅がもともとない場合や、縫い代が少ない場合は直しが難しいこともあります。そのため、仕立て屋さんやリフォーム専門の呉服店に相談して、どこまで対応できるかを確認してから進めるのが安心です。
大きく直せるかどうかは着物ごとに違うため、早めの確認がポイントになります。
自分で着物を縫う・仕立てるという選択肢もある
和裁に興味があるなら、自分で着物を縫うという方法もあります。和裁教室では、自分の寸法に合わせた着物を一から手縫いで仕立てることができるため、ぴったり合う着物が完成します。
特に体型で悩みやすい人にとって、「自分が着たい形・着たい寸法で自由に作れる」というのは大きな魅力です。初心者向けの反物セットやキットもあり、ゆっくり時間をかけて楽しみながら仕上げる人も増えています。
ミシンではなく手縫いで仕立てることで、着心地もやわらかく、布がなじむ感じも格別です。
レンタル着物は使える?大きいサイズの扱いがある店を選ぶポイント
特別な日や旅行など、短期間だけ着物を楽しみたいときには、レンタルという選択肢も便利です。ただし、ふくよかな体型の人にとっては、「サイズがあるかどうか」が最大の不安材料になります。ここでは、大きいサイズの着物をレンタルで利用する際に知っておきたいポイントを紹介します。
レンタル着物のサイズ上限と対応体型の目安
多くのレンタル店では「フリーサイズ」や「L〜3L対応」といった表記がありますが、その中身は店によってかなり幅があります。ヒップや裄丈、バストのゆとりなどが具体的にどこまで対応しているかを、事前にしっかり確認することが大切です。
目安として、ヒップ100〜105cmくらいまでは3L対応とされていることが多いですが、それを超えると対応外になるケースもあります。とくに袴スタイルや振袖レンタルでは、ヒップだけでなく上半身のサイズも重要になるため、全体の寸法バランスを確認しましょう。
サイズ展開が豊富なレンタル店の特徴と探し方
大きいサイズに強いレンタル店は、公式サイトで実寸を細かく記載していることが多く、「ふくよか体型専用」「5Lまで対応」などの表記があると安心です。また、体型別のモデル写真を掲載している店舗は、自分の着姿をイメージしやすく選びやすくなります。
探し方としては、「着物 レンタル 5L」「大きいサイズ 着物レンタル」などのキーワードで絞り込み、対応サイズが明示されているサイトを中心に比較するとよいでしょう。レビューや口コミで「サイズが合ったか」「苦しくなかったか」などの体験談があるとさらに参考になります。
予約時に必ず確認したいサイズまわりのチェック項目
レンタルの予約前には、必ず以下の点を確認しておきましょう。まず、自分のヒップ・裄・バスト・身丈の実寸を把握したうえで、商品の記載寸法と照らし合わせるのが基本です。
特に注意したいのが、「ゆったりサイズ」と書かれていても実際はL〜XL程度しか対応していないケースです。また、帯の長さや補整アイテムの対応範囲なども、ショップによって異なるため、問い合わせで確認しておくと安心です。
返却方法や延長対応、汚れ保証の有無も重要ですが、まずは「自分の体に合うサイズがあるか」をしっかり確認するのが最優先となります。
着物を快適に着るために知っておきたいサイズまわりの注意点
寸法が合っていても、着物は着方や小物の選び方によって快適さが大きく変わります。特にふくよかな体型の場合、着崩れしにくく苦しくならない工夫が必要です。サイズだけにとらわれず、実際の着心地や見た目にも気を配ることが大切です。
着崩れを防ぐために必要な補整と着付けの工夫
着物が着崩れる原因のひとつは、体の凹凸に対して着物がうまくフィットしていないことです。特にふくよかな体型の場合、バストやお腹まわりのふくらみが強調されやすく、そこから着崩れにつながることがあります。
これを防ぐには、補整で凹凸をなだらかに整えておくことがポイントです。たとえば、バストの下やウエストまわりにタオルを巻いて段差を調整することで、帯の安定感も増し、見た目もすっきりします。また、帯の下線が水平になるように意識して結ぶことで、全体のバランスが整います。
帯の長さは足りる?ふくよかな体型に合う帯選びのコツ
ふくよかな体型で気をつけたいのが、帯の長さです。標準サイズの帯では一重太鼓を結ぶのがぎりぎりになってしまうことがあり、見た目が窮屈になったり、帯結びが安定しなかったりする原因になります。
安心して使えるのは、「長尺帯」と呼ばれる少し長めの帯です。とくにお太鼓結びをする場合、通常よりも30cm〜50cm程度長いものを選ぶと余裕があり、美しく結ぶことができます。体型に合った長さがあるだけで、結び方の自由度も広がり、印象も自然になります。
苦しくなりやすい着物の着方と、快適に過ごすための対策
着物を着ると苦しいと感じる場合、その多くは補整や紐の締め方が原因です。特に補整を入れすぎたり、コーリンベルトや伊達締めをきつく締めすぎたりすると、動くたびに息苦しさを感じることがあります。
快適に着るためには、紐の位置と強さに気を配ることが大切です。紐は「固定するため」であって、強く締める必要はありません。また、補整も「入れすぎない」「体にフィットするように配置する」といった調整が必要です。
素材の通気性や吸湿性にも注目し、ガーゼやメッシュタイプの補整グッズを選ぶと、長時間着ていても不快感が軽減されます。
体型に左右されず、着物を楽しむために大切なこと
着物は、決まったサイズに体を合わせるものではなく、自分の体に合わせて工夫しながら着る衣服です。ふくよかな体型であっても、寸法を理解し、着方や小物を工夫すれば、十分に美しく心地よく着ることができます。
既製品だけでなく仕立てやレンタル、リフォームといったさまざまな選択肢を活用することで、自分に合った着物を見つけることは難しくありません。実際に着てみて、「苦しい」「似合わない」と感じた経験があっても、それは着方やサイズが合っていなかっただけかもしれません。
大切なのは、体型そのものではなく、自分の体に合う着方を知っているかどうかです。少しずつ知識を重ね、自分のスタイルを見つけていくことで、着物はもっと自由で楽しいものになります。